アキバからちょっと歩いたところにあるおでん屋に入ったら、
「百年の孤独」ってな焼酎があったので呑んだら美味かった。
帰ってみてネットで調べたら焼酎ブームの火付け役だそう。
焼酎は詳しくないんで名前で選ぶというのが良かったのか。
「百年の孤独」という焼酎の名は、ガルシア・マルケスがノーベル文学賞を取った小説の題らしい。
しかし南米文学というとプイグの「蜘蛛女のキス」とかオネッティの「井戸」とかしか読んだことがなくて、
おでん屋で「百年の孤独」という名を見つけたとき想起したのは、
むしろ谷川俊太郎氏の詩「二十億光年の孤独」である。
(火星人が「或はネリリし キルルし ハララしているか」というフレーズで有名で、
おまけに木下牧子氏の合唱曲でも知られるアレである。もしかすると日本で今一番有名な戦後詩かも)
さて谷川氏の詩では
「(火星人は)ときどき地球に仲間を欲しがつたりする それはまつたくたしかなことだ」
とある。
そこで今回問題になるのは、
地球に仲間を欲しがったりしない月人を巡る東方儚月抄の第十六話で本当は地球がどう見えるかという話。
(我ながら情けなくなるほど無駄な前振りである)
今回単行本で、第十六話に描かれた月が地球に修正されていたことは前に書いた。
その修正がなんともはや凄まじいもので、ソマリアの角が見えているという。
これが成立するためには、解決策は一つしかない。
幻想郷がアフリカにあればいいのである。
単行本の見え方だと、幻想郷がセネガルかシエラレオネあたりにあれば、ちょうど十六話のようになるはず。
まさかの幻想郷アフリカ説。
ま~数々の設定を上書きしてきた儚月抄とはいえ、さすがに幻想郷が日本にある設定は変えていないだろう。
とすると実際には単行本でどう修正すればよかったのか。
今回の記事は、突っ込みから一歩進んで調べてみたい。
(でも既に誰かがやっていそうなネタではある。被ってたらすみません)
あの時、幻想郷からは月がどう見え、晴れの海から地球がどう見えたのだろうか。
まず基本データとして、東方wikiの幻想郷年表を参考に、漫画版十六話を2007年11月24日(旧暦10月15日)とする。
小説版では八雲藍が「日が完全に落ちましたね」「まだ宵の口」と言っていることから、18 時に設定。
なんで18時かというと、気象庁の用語の使い方として宵の口は18時~21時に定義されているらしいのである。
ところが、後述するようにこの日の日没は16:35、
おまけに山がちの幻想郷(地平線も見えるようだが)だともっと早く暮れるはずなので、
「宵の口」としてもっとも早い18時にしないと「日が完全に落ち」るどころかとっぷり暮れてしまうからである。
(山がある場合の日出没時間がわかる実日出没時刻表というのがあるらしいが流石にこれは無料で手に入らない)
さて、幻想郷と晴れの海の位置だが、幻想郷は日本のどこかの山奥らしい。
ニコニコ動画のインタビューではZUN氏の生まれは白馬らしいので、
北緯36°41′43″≒36.68452°
東経137°51′55″≒137.85153°
長野県白馬村(の村役場あたり)を仮想幻想郷とした。
(仮想は幻想の下位らしいのでこんな仮定で許してください)
なお、
あの日の気象情報によると
24日、25日とも高気圧が列島を覆っており、長野県も晴天だった。
ただ25日の最低気温が-1℃とかなり寒い日だったようだ。
次に晴れの海(Sea of Serenity)の位置だが、Wikipediaの記事を参照に
晴れの海のど真ん中
月面緯度 北緯 28°
月面経度 東経 17°30′
にした。
さて、2007年11月24日、25日の仮想幻想郷から見たときの太陽と月のデータだが、以下のような感じになる。
計算には海上保安庁のサイト内にある
日月出没計算サービスを使った。
当日の天文イベントは以下の順で発生したはずである。
2007年11月24日 月の出15:53 日の入り16:35 月の南中23:31 月齢13.7
2007年11月25日 日の出06:35 月の入り07:17
こんな感じである。
ここで、
Celestiaという天文フリーソフトを使ってみよう。
このCelestiaというソフト、天の川銀河内の探索なら充分楽しめる、なかなか面白いソフトである。
(さすがに20億光年(約613.5Mpc)も離れるとデータがなくて真っ暗になってしまい、本当に孤独になるのだが)
もっとも今回調べるのは銀河どころか恒星系内の話でもなく、我らが地球とその衛星の話なんでこのソフトの性能を使いきれているかどうかは微妙。
(なんでGoogle Earthの月面マップを使わないかは後述)
まずは、2007年11月24日18時に仮想幻想郷 北緯36°41′43″ 東経137°51′55″から月がどう見えるか。

画像が暗くて申し訳ないが、このようにちょうど牡牛座の真上に月が見えたはずである。
なお月を横切るような線は月の公転軌道(白道)。
さてお待ちかね、同じく2007年11月24日18時に月の晴れの海 北緯 28°東経 17°30′から地球がどう見えるか。

おそらく晴れの海の海上を飛行中の紫と藍には空がこんな感じに見えたはずである。
地球は右の天秤座の両天秤に抱かれ、その左に蠍座が見える。左上に太陽が見えるが、
地球がこの太陽の真下を通る時が、ほぼ地球から見た満月の時間となる。
小学校の理科の時間を思い出せばなんとなく想像つくように、地球はかなり暗い。
どういう風に地球が見えるかはっきりしないので、地球に接近してみるとこうなる。

……太平洋が見えますな。日本は左斜め上の地平線近くに光の塊となって見える。
暗くてわからないので、Google Earthで2007年11月24日を指定したショットがこちら。

東方儚月抄十六話の地球は、こんな風に修正されればベストだったのではないか。
なお最後に、Google Earthといえば我らがかぐや姫が月に凱旋した時の映像が残っていることで有名。
……はい、月周回衛星かぐやのことですね。(
というか「かぐや」も「嫦娥」も月に突撃したんだが、そのネタはどうなった?)
上記でGoogle Earthの画像を使わなかったのは、
かぐやが月に激突する直前の断末魔の映像が、
ちょうど晴れの海を通る線で残っているため、Google Earthで映そうとすると月が美しく映らないのである。
で上の方ではCelestiaの画像を使ったのだが、せっかくだから「かぐやの最期の断末魔つき画像」も。
(いちおう画像の帰属表示のためのロゴつき)

(嘘ナレーション)革命軍を率いた蓬莱山輝夜と八意永琳は月に猛攻撃を加えたのち壮絶に散っていったという。
東方儚月抄の幻のED画像である。
輝夜も嫦娥も不老不死なんだし、派手に月面で爆散する話にしても良かった気がする。