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2017/05/09

夏が立って歩きまわり始めた今日この頃、いかがお過ごしだろうか。

さて、昨日の2017年5月7日に第14回博麗神社例大祭で頒布された
東方天空璋 ~ Hidden Star in Four Seasons.
の3人のボスについて、(ノーマルを全キャラでノーコンクリアしたので)、
いくつか気になったところをちょいと書き記しておこうと思う。

・1面ボス エタニティラルバ
体験版のCDレーベルに描かれた人物がこの妖精、エタニティラルバである。
綴りはゲーム画面で「Etarnity Larva」、omakeテキストで「Etanity Larva」だが、Eternityの誤植かもしれない。
eternityは「永遠」、larvaは「幼虫」という意味。
「永遠」という(意味に近い?)名、「神に近づく蝶の妖精」であること、幼虫、蛹、成虫の要素を併せ持つことから、
事前の予想通り、常世神を元ネタにした妖精だろう。
「常世神」とは古代の駿河に始まったアゲハチョウを神と祀る信仰で、秦河勝に教団ごと滅ぼされたことが歴史書にある。
筆者は、心綺楼の事前予想で、秦河勝と面霊気を予想したついでに、常世神も予想をしたことがあったが、
ここでようやく登場したか、という感じである。
なお、蝶の羽根を持つ妖精(大妖精)は、雑魚敵としてよく登場する。
エタニティラルバのキャラ説明テキストに、普段は「パワーアップアイテムを数個持参して遊びに行く」とあるように
彼女も、いつものSTGではボムのかけらなどを落とす、ちょっと強めの大妖精をイメージしているのではなかろうか。
(妖々夢4面のプリズムリバー戦直前の大妖精や、風神録6面の神奈子戦直前の大妖精など)

妖精関連で色々扱えるほか、虫同士リグルと、常世神関連で秦こころと絡ませるなど二次的扱いが容易そうではある。
三月精にも登場するかもしれない。

テーマ曲の曲名は、シェイクスピアの(あるいはそれを原作にしたメンデルスゾーンの)
『真夏の夜の夢』からだろう。
真夏の夜の夢は、妖精の王オベロンと妖精の女王ティターニアが引き起こす喜劇なので、
そのイメージもあるか。オベロン・ティターニアは(神主もファンの)女神転生シリーズ常連の登場悪魔でもある。

・2面ボス 坂田ネムノ

種族「山姥」で、見た目も巨大な山刀を持ち、茶系の服を着た女性である。
「坂田」という姓やゲーム中のセリフから、金太郞(坂田金時)の母親が山姥という伝説がモチーフなのは間違いない。

ここで重要なのは、金太郞出生伝説がある土地の一つ、長野県大町市八坂(旧八坂村)が、
ZUN氏にとって「あの山奥での生活が私に与えたインスピレーションは多大な物だった」といわしめる、
なじみ深い土地であること。
ZUN氏のブログ博麗幻想書譜の2006年1月4日の記事「そして地図から消えた村へ」
で紹介されている、ZUN氏の母方の実家の村こそが旧八坂村なのだ。
「どんなホラースポットも顔負けのナチュラル妖怪ヴィレッジ」と神主も言う通り長野県でもかなり隔絶された僻地である。
そしてその旧八坂村の真ん中にある「大姥山」には、まさに金太郞の母親である大姥を祀った「大姥神社」が鎮座している。
大姥神社の周囲には、金太郞の産湯に使われたという池など様々な伝承が残されている。
こうなると、坂田ネムノの第一のモデルは、まず旧八坂村の大姥神社の祭神である「大姥」と見てよかろう。
なお、筆者も旧八坂村を訪れ、大姥山に登ったことがある。
以下のブログ記事を合わせてご覧いただければ幸いである。
旧八坂村探訪記1
旧八坂村探訪記2
なんといっても、「妖怪と神が一体となった信仰」が息づいている魅力的な場所であり、
坂田ネムノファンは(こっそり)一度訪れてみるといいかもしれない。
ただし、大姥山はクサリ場が続く急な斜面があるので、ルートによってはそれなりの山登りの服装が必要である。

なお、旧八坂村では、大姥と八面大王が恋仲になって、金太郞が生まれたという伝承がある。
旧八坂村の旅館、明日香荘の公式サイトの「大姥様と金太郞の伝説」では、
「大姥は有明山の八面大王と恋仲になり、大王の子を宿し産んだのが金太郎である。」
とある。
八面大王とは、魏石鬼(ぎしき)八面大王という長野県の伝説的な鬼、
あるいは8人の盗賊の呼称と言われている。
8人の盗賊といえば、初版蓬莱人形の「正直村の八人」が思い起こされるので、そちらの元ネタを考えるのも面白い。
しかし、まず八面大王が鬼だとすると、その妻がこれまた有名な「紅葉」だという伝承にも行き着く。
紅葉といえば長野県の戸隠の有名な鬼女であり、鳥山石燕の今昔百鬼拾遺にも「紅葉狩」として出てくる。
すると、八面大王を中心に、「金太郞の母である、旧八坂村の大姥」と「戸隠山の鬼女として有名な紅葉」を
重ねることも可能で、坂田ネムノに紅葉のイメージが入っていると考えると、
紅葉からの連想で坂田ネムノが「秋」を割り当てられたと考えることもできよう。
また、鬼女の紅葉は、10世紀の人物である源経基と都で一時期暮らしたという話もあるようだ。
すると、坂田ネムノの「浮き世の関を超える山姥」の「浮き世の関」とは、(慣用句の意味以外にも)
逢坂の関のことを指しているのかもしれない。

さてここまで、八坂や戸隠にスポットを当ててきたが、もちろん、
長らく神奈川県住まいで箱根の温泉も好きな神主のことだから、
足柄山の方も意識しているところはあるのかもしれない、と付け加えておく。

さて、「坂田」の方は金太郞関連で考えればいいが、「ネムノ」はどうだろうか。
ここで、かつてNHK Worldで東方特集が放映された時に映った、ZUN氏の仕事場の本棚の本に注目すると、
中野進『花と日本人』という書籍の中で「ネムノキ」について述べられていることがわかる。

「これで思い出されるのが、東北三大祭の一つといわれるネブタ祭である。
漢字で佞武多などと書かれるとどんな意味かわからない。
ネブタの「タ」は古い用法で「ノ」の意味であるから、「ネブタ」は
「ネムノ」つまりネムの木に由来していると考えられる。」
(中野進『花と日本人』2000年 146ページ下段9行目から引用)

「ネムの葉で目をこすると早起きができる。特に七夕の朝に行なうとよいとか、
また七夕の日にネムの木を伐りとってきて
『ネブタ流れろ、マメの木とまれ』と、唱えながら川へ流し、ネムの葉で目を洗うとよく見える、
といった民間信仰もある。」
(同、147ページ下段1行目から引用)

ここから、坂田ネムノの「ネムノ」は、ネムノキの意味と同時に、
東北のネブタ(ネプタ)を意味していると考えて良かろう。
坂田ネムノの特徴的な方言ぽい言葉使いは、東北の住民を意識したのかもしれない。
ただ、坂田ネムノはスペルカードやテーマ曲でも、ネムノキやネブタ祭をあまり考えさせない。
なぜ、ネブタなのだろうか。
ここで、ネブタが旧暦の七夕の時期に行われること、天空璋の初期タイトルが「天星璋」だったと思われることから、
(天空璋体験版のウィンドウのタイトルが「天星璋」だったり、
起動ファイルをメモ帳に突っ込むと「天星璋」の文字列があったりする)
もしかすると、(璋の字から北斗七星=天龍絡みでは? という予想を裏切って)星関係でも、
七夕関係の異変なのかもしれない。
あるいは、旧暦が幻想入りして約1箇月ずれることがモチーフなのかもしれない。
なにしろ、七夕が秋の季語であるように、本来の季節とずれてしまっているのだから。

・3面ボス 高麗野あうん
3面はなんと博麗神社でボスと闘う。
博麗神社がステージになるのは黄昏作品だと頻出だが、本家の原作STGではおそらく東方封魔録1面の
里香以来ではないか。
そのボスの高麗野あうんは狛犬キャラである。
神社の守護、一人で二人、というキャラ造形は、東方第一作目の東方靈異伝の最初のボスである
「シンギョク」を連想させる。

なお、高麗犬の「高麗(こま)」は、歴史学的な高麗(こうらい)ではなく、高句麗の方を指す。
高句麗の時代から、「高麗」という名称で呼ばれ、当時の日本でも高句麗を高麗と書いて「こま」と呼んだのである。
また、高句麗は「貊」とも呼ばれていたことから、貊=狛=高麗が、ともに「こま」と呼ばれるようになったようだ。
ただし、(話が複雑になるが)、「こまいぬ」と高麗=狛の関係は必ずしも明らかではない。
大陸で獅子だったものが、朝鮮を通じて伝わったため、犬だと思われた、など説があるようだが、正直よくわからない。
このような場合、神主の所有する書籍に何か狛犬に関する独特な記述があって、それを種本にしている可能性が高い。

さて、ここからは元ネタと確定している話ではないが、埼玉県に、
かつてその名も高麗郡と呼ばれる地域があったことはご存じだろうか。
高句麗(つまり当時の呼称の「高麗」)が唐・新羅に滅ぼされた時(西暦668年)、
多数の亡命者が日本に来ることになった。
日本の朝廷はそれら帰化人を武蔵国に住まわせ、高麗(こま)郡としたらしいのだ。
この古代の武蔵国高麗郡は、現在の埼玉県日高市や鶴ヶ島市の地域などに当たり、
その歴史を今に伝える高麗神社が残っている。
(以上の由緒も、「高麗神社」の公式ホームページの解説「高麗神社の由緒と歴史」を参考にしたものである)
この高麗神社は興味深いことに、ZUN氏が東方Projectを生んだ東京電機大学鳩山キャンパスがある、
埼玉県鳩山町に近い。
地図を見て貰えればわかるが、鳩山町の南へ少し行ったところが、古代高麗郡であり、高麗神社がある。
近年、同じく埼玉県の聖天宮が東方Projectの背景にたびたび使われるようになったことを思えば、
高麗神社も埼玉県ネタとして、高麗野あうんを通じて何らかの意味があるのかもしれない。
この高麗神社、将軍標が立てられるなど、韓国とつながりが深い。
もし高麗神社が何らかの元ネタとなっているなら、色々面白そうだ。
東方は、日本と中国のキャラは豊富だが、それ以外のアジア系はそれほどいない。
東方は韓国にも沢山ファンがいるので、案外そこら辺の二次的アプローチもありかもしれない。

さて、あうんは、霊夢が知らないにも関わらず、神社を守護している、という、
これまた意外というか、かなり強引なキャラ設定を持っている。
勘のよい霊夢すら知らないのに、神社の守護をしていて、しかも結構弱い。
原作者側の「東方のなんでもアリ感」の演出のために、このような強引というか掟破り的なキャラ設定なのかもしれない。
(二次創作を考えると、地霊殿エンディングで博麗神社のペットになったはずなのに、影も形もないお燐は、
実は高麗野あうんに追っ払われていたとか…… 
お燐とあうんの取っ組みあいを描くだけの薄い同人誌が出てもおかしくない)
設定だけ見ると、意外と古い妖怪なのかもしれない。
二次的には、先代巫女だとか、大昔の博麗の巫女だとかを語らせると良さそうなキャラである。
あるいは、儚月抄で霊夢が留守にしていた間に、高麗野あうんが神社を守る話なんかも良さそうだ。

キャラ設定テキストでは、「意図的に重大なものが隠されていると悟った」などと意味深な説明がされている。
もしかすると、5ボス~6ボスあたりのキャラに、なにか告げ口しに行くような展開かもしれない。
(神仏を見つけ出す能力があるので、石長姫だとか、龍神だとかに会うことも可能かも?)

さて、3人について、とりあえずの覚え書きはこんなところである。
システムなどについては、ハードやルナティックまでやらないとよくわからない。
特に、スコアエクステンドが季節解放をやった結果、どのくらい早くなるのか、
ノーマルレベルだと、あんまりよくわからなかった。
加えて、弾へのカスリなどもそうだし、4つもあるサブ季節の選択もいまいち把握しきれていない。
音楽も、今のところ、輝針城や紺珠伝ほどには、耳に残っていない。
もう少しプレイしないと、何も言えないという感じである。 

まあ、なんやかんや言って、製品版が楽しみである。
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